鉄瓶は中を洗いません |
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「赤錆」と「黒錆」 |
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一般的に鉄に生じる「錆」には、「赤錆」と「黒錆」があります。
「赤錆 (Fe2O3) 」は鉄表面に水や酸素が接することで表面から脱落して生じた酸化鉄や水酸化鉄です。「赤錆」は密度が粗くもろいため、鉄表面に生じるとどんどん鉄内部に進行し強度の低下をもたらします。
「黒サビ(Fe3O4)」は、鉄をガスバーナーで赤熱させて鉄と高温の水蒸気を酸化還元反応させたり、赤サビを酸化還元させたりすることで生じるものです。「黒錆」は、鉄の表面を非常に緻密に被膜するため、外部の酸素や水から遮断して中の鉄を保護することができます。
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錆の付いた五右衛門風呂
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五右衛門風呂や鋳鉄羽釜の錆処理について |
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昔から鉄瓶などでは、鉄瓶の中に赤錆が生じても害がないとのことでそのまま使っていました。逆に、鉄瓶の中の赤錆をとると赤錆の症状がさらに進行してしまうとのことで触らないようにと教えられてきました。
しかし鋳鉄釜や五右衛門風呂で赤錆を放置しておくわけにはいきません
鋳鉄羽釜や五右衛門風呂の初期の赤錆対策としては、表面の赤サビを拭き取ったあと、タンニン酸を含んだお茶ガラや渋等を繰り返し塗りつけることで、鉄内部に進行した赤錆を黒サビに還元させ被膜することができます。たとえばお茶のティバックを1日貼り付けてみてください。鋳物の色が黒くなっていれば赤錆が還元して黒錆になったということになります。
確かにタンニン酸により赤錆を黒サビに変える方法は鉄内部に進行した赤サビの除去に有効ですが、黒サビの付着力は表面的で弱いため、乾かした後その表面を必ず油等で被膜してください。あくまでも初期の錆対策であり、進行が進んだものは対応できません
錆対策の基本は、使用後に乾かして鉄の地肌を直接水や空気と接しないように油で被膜することです。補修した部分があれば乾かして油で被膜する、長期保存する場合も洗った後に乾かして油を塗るということではないでしょうか。
「昔扱っていた時にはそんなメインテナンスはしてない」という方もいらっしゃるかと思いますが、昔は洗剤を使ってなかったのできれいに油を取りきることができませんでした。お米にも人の体にも油があり、その油で鉄釜や生地の五右衛門風呂は被膜されていたものと思われます。
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